北海道

第4章 計画の主要施策

第3節 魅力と活力ある北国の地域づくり・まちづくり

 多様で個性ある地域から成る北海道を実現するためには、医療、福祉、教育、情報、商業など地域の暮らしを支える都市機能を広域的な生活圏において維持し、各地域の特性を最大限活かした魅力と活力ある地域社会を形成していくことが必要である。
 また、都市における機能の強化や人口低密度地域における地場産業の育成、二地域居住といった新たな居住形態の創造など、活力ある地域社会モデルへの取組を進めることが必要である。
 
(1) 広域的な生活圏の形成と交流・連携強化
 広域分散型社会である北海道において活力ある地域社会を形成していくためには、地域経済や暮らしにおけるつながりを持つ6つの広域的な生活圏を単位とし、圏域全体で暮らしや経済を支えていくことが必要である。
 このため、それぞれの広域的な生活圏の拠点となる都市に集積された都市機能を維持・高度化しつつ、都市間で相互に機能が補完されるようなアクセス強化を推進する。
 特に、札幌市を中心とする都市圏には北海道内で最も高度な都市機能が集積しており、広域的な生活圏の拠点都市としての役割に加えて、北海道全体の経済社会を牽引していく役割が重要である。このため、都市圏の国際的な魅力を高め、諸外国を含む他地域との交流を発展させる取組を推進する。また、北海道全体を対象とする高次の都市機能が維持増進されるよう、高度な知的資本の集積、産学官・企業間の連携の強化、文化芸術活動の振興など拠点性の向上を図るとともに、これを支える土地の高度利用、都市構造の再編等を推進する。
 多様で個性ある広域的な生活圏の形成に向けて、圏域内外の様々な連携が相乗効果を生み出すよう、交通・情報・人的ネットワークの強化を推進し、全国、世界との直接的な交流を促進させる。
 また、「国土の国民的経営」による地域づくりという考え方に立ち、美しく豊かな国土を国民全体として支えるとともに、後世代に継承していくため、民間を始めとする多様な主体による開かれた地域づくりの実践等を図り、活力ある地域社会のモデルとなる先駆的な取組を推進する。
 
(2) 都市における機能の強化と魅力の向上
 
(集約型都市構造への移行)
 人口減少・少子高齢化を迎える中で、活力ある地域経済社会を維持していくため、今後目指していくべきものと考えられる集約型都市構造への移行を基本とした各種施策を進めていくことが必要である。
 このため、まちなか居住の推進や都市機能の集約化により拠点でのにぎわいづくりを進める。また、除雪費低減など都市経営コストを抑制するため、郊外部における土地利用規制等による都市機能の適正配置を図る。集約拠点となり得る主要駅周辺の低未利用地等では、都市機能の効率を高める街区の再編や基盤施設の一体的整備を推進し、集約拠点へつながる公共交通ネットワークや、道路ネットワークの強化などを推進する。
 
(都市の魅力・活力の向上)
 地域の歴史、産業等を地域の誇りとして再認識し、これを観光資源として活かすなど、地域主導の個性あるまちづくりを進めることにより、都市の魅力・活力を向上し、活発で多様な交流を推進する必要がある。
 このため、文化財や産業遺産の保存・活用、美しいまちなみ景観の形成等を促進するとともに、地域からの情報発信・交流機能を高める観光情報センター等の施設整備や、にぎわいを創出するイベントの実施、観光資源の発掘等を促進する。このような活動は、住民、企業、行政の協働により地域が一体となって行われることが重要であり、地域の協働によるまちづくりの展開を促進する。
 また、住民が安心して働き、活き活きと暮らしていけるよう、安全・安心で良質な住宅を適時・適切に選択できる住宅市場の形成及び住宅のセーフティネットの構築、上下水道の整備等を促進する。
 
(冬も暮らしやすい生活環境の創造)
 北海道の積雪寒冷な気候は、地域経済や暮らしの障害となっている面もあることから、快適な冬の生活環境づくりを目指した施策の推進が必要である。
 このため、北方型住宅に代表される高断熱・高気密住宅の性能向上のための仕様や工法等の開発と、一層の普及を促進する。また、冬でも暖かい共用廊下等を設置するなど克雪型の集合住宅の普及や、堆雪空間としての活用に配慮した都市公園、融雪槽等の整備を促進する。
 また、冬でも快適な歩行空間の確保を図るため、駅周辺部や公共施設周辺等において、冬期を考慮した歩行空間のバリアフリー化や地下を利用した歩行者用通路等の整備を推進するとともに、地域住民等との協働により、転倒事故を防止するための取組等を推進する。
 さらに、冬の余暇活動の場として、スキー場の活性化等を図るとともに、屋内遊戯施設、体育館、冬季スポーツ施設を備えた都市公園の整備を推進する。
 
(ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたまちづくり)
 高齢者や障害者等を含めたすべての者の社会参加による活力ある社会を実現するため、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたまちづくりを進める必要がある。
 このため、公共交通機関、建築物、道路、公園等のバリアフリー化を推進するとともに、意識啓発や交流の場の提供による心のバリアフリー化を推進する。
 また、安心して子どもを生み育てられる環境を確保するため、家族向け賃貸住宅や子育て支援施設の充実及び歩いて行ける身近な緑地の保全や都市公園の整備を促進する。
 さらに、障害者が施設から地域へ居住の場を移し、社会参加の機会を広げ、様々な人々との交流を深めるための活動を支援する。
 
(3) 人口低密度地域における活力ある地域社会モデルへの取組
 主として農林水産業が営まれている人口低密度地域では、人口減少等の進行により、地域社会の活力や社会的サービスの低下が懸念されている。
 こうした地域においては、恵まれた環境、良好な生産基盤及びこれらの下で展開される生産活動と結び付き形成されてきた美しい景観等、地域資源の適切な保全を図りながら、その魅力や特性を最大限利用し、都市との交流の拡大等を通じた地域社会の活力の維持向上を図る必要がある。
 このため、生産者と地域住民による地域資源の保全・活用に係る共同活動等の実践、地域資源を活用した内発型の地場産業の育成を促進する。また、グリーンツーリズム、マリンツーリズム等を促進するとともに、企業やNPO等による森林整備・保全活動や森林体験学習及び森林セラピーの取組等を促進する。
 さらに、地域の内外の多様な主体による連携・協働により、質の高い生産環境の整備、モビリティの確保、長期滞在、二地域居住、冬期集住(注17)にも対応した暮らしやすい生活環境の整備、地域資源を活かした観光等の推進を行う、活力ある地域社会モデルの構築を図る。
 
(4) 多様で個性的な北国の地域づくり
 広大な北海道は、一つの同質的な地域ではなく、気候、人口、産業、歴史、文化等が異なる多様で個性的な地域から成り立っており、それぞれの地域資源を活かして独自性のある発展を遂げていくことが必要である。また、地域の成長力を高めていくためには、東アジアを始め内外の諸地域との交流・連携を進めていくことが必要である。
 このため、地域における行政・民間の多様な主体は、地域の将来像の実現に向けて、適切な役割分担の下、ハード・ソフトの両面にわたる多様な連携・協働を推進する。また、交通ネットワークなど交流基盤の整備を推進するとともに、北海道と隣接する東北地方やサハリン州などとの交流を始め、内外の諸地域との交流を促進する。
 
 なお、我が国固有の領土である北方領土では、戦後60年以上を経た今もなおロシアによる不法占拠が続いている。根室市等の北方領土隣接地域は、かつて行政的にも経済的にも北方領土と一体の社会経済圏を形成して発展した地域であるが、北方領土問題が未解決であることから、戦後はその望ましい地域社会としての発展が阻害されてきた。また、当該地域は、北方領土元居住者が多数居住する北方領土返還要求運動の拠点である。
 このため、安定振興対策を計画的に推進するとともに、旅券・ビザなしで実施される四島交流や国民世論の啓発活動の一層の充実などにより、北方領土の早期返還の実現に向けた環境整備を推進する。
 
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(注17)冬期集住:積雪を原因とする家屋倒壊による事故の発生や、住民や行政による除雪の負担等を軽減・回避するため、冬期間、地域内の複数世帯が一か所に集まって住まうといった新たな居住形態。

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